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2020.05.25更新


福岡県の緊急事態宣言が解除されてだいぶ時間が経ちました。徐々に日常生活が戻ってきたような気がします。

「歯医者さんに行きたいけれど、新型コロナウィルスの感染が心配?」と不安に思っている方も多いと思います。でも、そんなことはありません。
今回は、歯科医院へ行っても感染リスクは決して高くない、ということについて解説したいと思います。
歯科医院では、常日頃から感染予防対策をしっかり行っています
歯科医院ではそもそも、新型コロナウィルス以外にも多くのウィルスや細菌などへの感染を防ぐために、ふだんから予防策をしっかりと講じています。
 新型コロナウィルスだけでなく、ノロウィルスやはしか、風しんなど、私たちの身の回りには感染を引き起こす可能性のあるウィルス、細菌などがたくさん存在していますし、歯科の治療を通じては、肝炎ウィルスの感染リスクが以前より指摘されています。よって、さまざまな対策をもともと行っているのです。手指の衛生を保つこと、防護具を着用すること、医療器材の洗浄・消毒などがそれにあたります。洗浄・消毒に際してはその作業工程を区域に分けて汚染が広がらないような細やかな配慮もしています。
このようないわゆる「標準予防策」に加え、さらに新型コロナウィルスへの対策もしっかり行っています。

コロナ

 また待合室や治療室での人口密度をできるかぎり小さくし、さらには発熱など感染が疑われる患者の診療も避けるようにもしています。そうして、患者間での感染や、医院内での感染拡大が起きないよう、細心の注意を払っているのです。
 ではなぜいったい、「歯科医院は感染リスクが高いのでは?」と言われてしまっているのでしょうか?
 こうした言説が広がったのは、3月下旬から4月上旬にかけ、歯科医院が新型コロナウィルスの感染リスクが非常に高いというメディア報道がいくつもなされたことによると思われます。
 これらの報道の多くは、3月15日に報じられたアメリカの新聞・ニューヨークタイムズ紙の記事をもとにしているようです。また最近(5/12)もVisual Capitalistというメディアの記事を元に再度日本でも報道がありました。
[The Workers Who Face the Greatest Coronavirus Risk – The New York Times]

 これらの記事のデータでは歯科医師は大変感染リスクの高い職業である、というふうに結論づけられています。
 しかしこのデータから歯科医師は新型コロナウィルスに著しく感染しやすい、と考えるのは明らかに間違っています。
 これらの報道は、何かの科学論文の引用ではなく、新聞社で独自に作成したものです。O*NETという米国労働省が運営する職業に関する総合的なデータベースを論拠としていますが、実は2年前(2018年5月)のデータを用いているのです。

 つまり、仕事で病気(どういった病気かは問わない)に接し、その病人(どういった症状かは問わない)との近接が高い職業である歯科医師は、感染のリスクが高い、というのがこのデータの理屈です。
 
 でも、そんなことで、本当に歯科医師はコロナウィルスに感染しやすいということになるのでしょうか?
 ウィルスに感染した人と多く近く接することと、実際に感染することとは全く違うことは、皆さんもおわかりでしょう。感染予防対策をしっかりしているかどうか、という要素が抜け落ちてしまっているのです。
ですので、この図から、歯科医師は新型コロナウィルスに感染しやすいと結論付けるのは明らかに間違っていること、おわかりいただけるかと思います。
 歯科医院はしっかりと、新型コロナウィルス感染予防の対策を講じています。もちろんその予防策で100%新型コロナウィルスの感染が防げるという証拠があるわけではありません。でも、ニューヨークタイムズ紙が言うように、歯科医師や歯科衛生士が最もリスクの高い職業であれば、明らかに日本でも歯科医師の多くが感染しているということになるはずですが、そんなことはまったくありません。つまりそのこと自体、日本の歯科医院の感染対策が総じて効果的であることを示しているのです。実際、歯科医院における患者さんと歯科医院スタッフ間の感染は全国で1ケースといわれています。
 
 しかしながら、今回のような報道がきっかけとなって、歯科医院が危険な場所という誤解がすすみ、受診をするのを控えるような空気になっているのはたいへん問題であると考えています。多くの歯科医師や歯科医療関係者が困惑しているのです。

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間違った報道を信じず、不要でない歯科治療や口腔ケアをしっかりと行うことがコロナウィルス感染予防に繋がります。
 もちろん、全国に緊急事態宣言がなされたような社会状況を見たときに、「不急の治療」については、それを延期すること自体は正しい判断だと思います。診察のために人の移動が発生したり、いわゆる3密の状態が発生したりするリスクが減るのであれば、それに進んで協力をするのは歯科としても当然のことと思います。
 しかし、「不急ではない治療」は案外多いものなのです。
 例えば、高齢者施設では通常、歯科医師が口腔ケアのために頻繁に訪れるものですが、いまは歯科医師の立ち入りを拒否しているところも出てきています。こうした施設では、口腔ケアの不足により、肺炎などを発症しやすくなる可能性が高まります。事態が長期化すればするほど、さまざまな問題が早く現れる可能性があるのです。
 緊急事態宣言が解除された今後も、私たちは新型コロナウィルスとの共生を図っていかねばなりません。
報道によって、歯科治療や口腔ケアがなされることなくそのまま放置されてしまうのは、大変大きな問題になると危惧しています。

 

投稿者: いまむら歯科クリニック

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