こんにちは。八幡西区にある歯医者いまむら歯科クリニック、今村です。今回は歯周病と認知症について、歯周病と誤嚥性肺炎のお話をしたいと思います。
認知症に歯周病が関連すると言われています。歯周病菌の中にはたくさんの細菌が存在します。最も代表的なものはポルフィロモナス・ジンジバリス(Pg菌)と呼ばれている細菌です。この細菌が恐ろしいのは歯周病を悪化させるように周囲の細菌に働きかけるだけでなく、歯周病菌の中でもとても強力でタンパク質分解酵素持っていることです。タンパク質を分解して、得られたアミノ酸をエネルギー源とするのです。歯周病が進行し、ひどい炎症を起こした歯茎の傷口から菌が体内に入って行きます。
Pg菌が体内に入り込むと恐ろしいということが近年わかってきました.
脳に侵入したPg菌がタンパク質分解酵素で神経細胞を変性させ、アルツハイマー型認知症を進行させている可能性があると言うことが示唆されました。認知症はさまざまな原因が複合しておこります。今までも、お口の中からの要因として、「歯を失って咬めなくなると脳に刺激がいかず認知症になる」と言われていました。しかし、歯周病菌そのものが直接認知症の機能までも侵している可能性があるということは新しい発見でした。
加齢に伴い歯周組織や免疫が弱まると、歯周病になりやすくなります。よって体が元気なうちに歯周病の治療をし、また歯周病の予防を悪化させないようにお口の健康を管理して行くことが大切です。
Pg菌のタンパク質分解酵素については酵素の働きを阻害する薬の研究が進められています。ジンジパイン阻害薬と言いますが、研究が成功し薬として使われるようになれば認知症治療に画期的なものになるでしょう。
誤嚥性肺炎などの感染症の予防にはお口の中を清潔に保つのが必要です。肺炎は細菌やウイルスが肺の奥にある肺胞に入り込み、そこで繁殖して炎症を起こす病気です。一方、誤嚥性肺炎は唾液や飲食物に含まれる細菌が誤って肺に入り込み、そこで繁殖して肺炎を起こします。唾液や飲食物は普通なら食道に入って胃に入っていくのですが、加齢により喉の周りの筋肉が衰えてしまうと空気の通り道である気道に誤って入り込んでしまいます。
日本人の死因の第6位をしめる恐ろしい病気です。誤嚥性肺炎の予防には歯科衛生士さんなどの専門家による口腔ケアが有効であることが複数の研究から明らかになっています。お口の中の唾液に含まれる細菌が減れば誤嚥が起こっても肺炎につながる危険性が減ります。
予防には歯医者さんで定期的にお口をクリーニングしてもらい、ご自宅でのセルフケアの指導を行ってもらうことが大切です。
また感染症と言えば第5類には移行しましたが、新型コロナ感染症です。ウィルスは人の特定の細胞の中で増殖します。お口から入ってくる場合、舌や喉などのお口の粘膜に付着しそこから細胞内に入り込みます。お口の粘膜細胞内に入り込んだ新型コロナウイルスは、血管や肺の細胞へと侵入し増殖して行きます。新型コロナウイルスの研究はまだ正確には判明していないところもありますが、お口の中の細菌がウイルスの侵入を助長しているとも言われています。虫歯や歯周病は細菌が原因で歯石やプラークの溜まったお口は細菌がたくさん存在する証拠です。感染予防の基本はきれいなお口を維持することです。