八幡西区の歯医者いまむら歯科クリニックです。
当院で治療を行う際にはお口の中の写真撮影をさせていただきます。目的は2つあります。ひとつは私たち歯科医師、スタッフがお口の中の状態がより把握できるようにするためです。限られた診療時間内では患者さんのお口の中を診るには限界があります。撮影された画像をしっかりと見ることにより様々な情報を得ることができます。
では実際、口腔内写真からはどのようなことが観察できるのでしょうか。口腔内写真の構図には撮影部位によってそれぞれ撮影枚数が異なりますが、当院では5枚法の撮影を主に行うようにしています。5枚法とは噛んだ状態での正面、お口を開けての上顎の歯列、下顎の歯列、噛んだ状態での左右のかみ合わせの写真の計5枚をいいます。5枚撮影するとお口の中の状態がほぼ観察することができます。
口腔内写真5枚法からは以下のことが観察できます。
上下かみ合わせの関係と歯並びの状態、歯ぐきの状態(バイオタイプ、発赤、腫脹、歯頚ライン等)プラークコントロールの状態、小帯の付着異常、また歯の色調や形態を観察することができます。
また、チェアサイドで患者さんの口腔内を直接診ている時には見落としていたことや、治療による詳細な変化を口腔内写真から発見することもあります。このように直接口腔内を診ているときより、口腔内写真からさらに診断や治療方針を確認することができます。そのためには、ただやみくも撮影を行うのではなく、写真に規格性がなければいけません。規格性があることにより得られる情報は多くなります。規格性のある写真を撮るために撮影の際、お口の中にミラーを入れたり、口唇に器具をかけたりします。
2つめの目的は患者さんにご自身のお口の中の写真を見てもらい、治療への理解を深めてもらうことです。実際、自分のお口の中を見ることってあまりないと思います。今自分の歯は何本あるのか?むし歯はあるのか?歯ぐきは健康な状態なのか?など…画像をみてもらうことによってご自身のお口の中に対して関心も高まるかと思います。
また審美治療を行うときには技工士さんとのやりとりで活用します。画像を技工士さんにも観察してもらうことにより、患者さんが望んでいる歯の形態や色調だけではなく歯ぐきの形態、性状を技工士さんに伝えることができ、精度の高いセラミックの被せ物を作製することができます。規格性のある口腔内写真撮影を行う際に必要となる器材は、デジタル一眼レフカメラ、口唇を排除するための口角鉤、口腔内撮影用ミラー、コントラスターが必要となります。デジタルカメラも一般のものではなく、当院では口腔内写真撮影のために専用に規格開発されたソニックテクノ社製のカメラを用いています。
歯科治療で診断を行うために重要なのがレントゲンです。レントゲンは必要不可欠なものです。歯科医院で撮影するレントゲンには大きくわけてふたつあります。一つはむし歯の治療、歯周病の治療を行うまえに撮影するデンタルエックス線写真。もう一つは歯科医院を受診した際に最初に撮影することがあるパノラマレントゲンがあります。今回はパノラマレントゲンについてご説明いたします。
パノラマレントゲンは、上は眼窩(目の周囲)から下は下顎オトガイ部(下顎)までの範囲を一度に撮影することができます。当然上顎の歯、下顎の歯も写ってきます。パノラマレントゲンを撮影することによって以下のことがわかってきます。
1. むし歯の有無
2. 歯周病の程度
3. 親知らずの状態
4. 顎の骨の中にある病気の有無
5. 顎関節(顎の関節)の状態
6. 上顎洞(副鼻腔)の状態
7. 歯科の治療歴
8. 被せ物の状態
9. 過剰歯の存在
10. 子どもの場合過剰歯、欠損歯のチェック
などたくさんの情報を得ることが可能となり、診断を行ううえでとても役立ちます。
当院ではメンテナンスに来られている方はむし歯、歯周病、またその他の病気の早期発見のため数年に一度はパノラマレントゲンを撮影することをお勧めしています。
またお子さまの歯が乳歯から永久歯に生えかわる時期に外から見ているだけではわからない問題が起きてくることがあります。
歯が通常より多い過剰歯は30人に1人ほど、永久歯が少ない先天性欠損歯は10人に1人くらいの割合で見つかりますが、早期発見で歯並びや噛み合わせを守ることのできる場合もあります。お子さまが生えかわりの時期になったら一度歯科医院でパノラマレントゲンを撮ると早期の異常発見に有効です。
パノラマレントゲンは有効であるけど放射線量が心配と思われている方もいらっしゃるかと思います。パノラマレントゲンの放射線量については欧州委員会のガイドラインでは約0.003338~0.03ミリシーベルト、日本ではイギリス、フランスと同程度の0.01ミリシーベルトと推定されています。この数値は自然放射線と比較してみると理解しやすいでしょう。私たちは宇宙や大地、空気食物から微量の放射線を受けています。これを自然放射線といいます。私たちが年間自然放射線から被ばくする量は、日本で2.1ミリシーベルトといわれています。東京~ニューヨーク間を飛行機で往復する際の被ばく量は約0.2ミリシーベルトです。パノラマレントゲンで被ばくする量はその200分の1程度とわずかでしかありません。さらに撮影時は防護エプロン(鉛が入っていて被ばく量を100分の1にすることができる)を着用するので被ばく量はさらに減ります。ただ被ばく量が低いとはいえ、メリットの少ない撮影は控えるべきです。患者さんが最小の被ばく量で最大の利益を得られるよう適切に撮影していますので安心してください。